神奈川県の県立高校の新しい取り組みについて、4月20日付の神奈川新聞の配信記事で知りました。
神奈川県教育委員会が2017年度から障がいの有無にかかわらず、共に学ぶインクルーシブ教育として県立高校3校で知的障がい者枠を設け、軽度の知的障がいのある生徒を受け入れる取り組みを始めたというもの。初年度は3校で合計31人の生徒が入学し、学びをスタートさせたようだ。
対象は、知的障がい者に発行される療育手帳の障害程度4区分のうち最も軽度の「B2」程度の生徒。手帳の有無は問わない。中学校長推薦で志願者を決め、入試は学力試験を課さずに面接のみ。
教諭の人員については、通常の学校より各校とも7人増やす加配措置を取った。授業は原則として2人の教諭が担当し、できるだけ一緒に学びながら必要に応じて個別指導を行う。
というもの。もちろん、基本的に前向きな取り組みであり、進学を希望する生徒にとって選択肢の幅が広がるという面から考えるといいことだと思う。にもかかわらず、保護者や支援者からは課題や問題点が指摘されている。
それは、ただ単に選択の幅が広がったことを喜べばいいというような単純なことではなく、その選択をしてそこの高校へ入学するという段階までの過程にたくさんの課題があるのだ。
現場において特別支援教育の分野の様々な取り組みは本当にいいことだと思うし、それを必要とする子どもたち一人ひとりの実態に即した支援体制が、以前に比べて広がってきていることは本当にいいことであると思う。
しかし、その事実の背景にはどんどんはっきりとした線引きがなされてきているという事実も忘れてはいけない。小学校、中学校といった時代を支援中心の中で過ごし、高校に入っていきなり「一緒に…」というのは非常にハードルが高くなるので、そこに対して、本人や保護者が不安を感じるのも至極あたり前のことだと思う。
横軸ではなく縦軸で成長を捉えるためのインクルーシブ教育
このことは、子どもたちの支援をしていてずっと感じていることだが、支援が受けられたり、理解ある人たちに囲まれながら生活したりできている時間の中でゆっくりいろんなことができるように成長していけたらいい。
しかし、学校でも、将来生きていく社会でも、子どもたちのまわりにいつでもそんな環境が整っていたり、理解ある人たちばかりがまわりにいたりするわけではない。いや、どちらかと言えば、そんな理想的な状態の方が少ないであろう。
だからこそ、特別支援教育という分野において、子どもたちの成長につながるいろいろな成長の機会を整えつつ支援をしていくのはもちろんだが、インクルーシブ教育を通して、多様化し、高度に複雑化していく社会環境や人間関係の中で生きていく力を少しずつ養っておいてあげることは、子どもたちのためには本当に大切であり、必要なことであると思う。
そこに一番必要なのは、子どもの成長の時間軸を横に見て、輪切りにした状態での年代別や学校別の支援体制ではなく、時間軸を縦に見て、連続性や継続性をもった段階的な支援体制を整備すること。特にゆっくり成長している子どもたちにとっては、少しずつ「できた!!」という達成感と自信、そして次への見通しがもてる状態で安心して学べる環境を整えてあげるの理想です。
そういう視点での教育環境や支援体制が整った上で、これまで以上に本人やご家族にとっての選択の幅が広がるような新しい仕組みや取り組みが、今後どんどん増えていくといいですね☆