一つの課題をこなす中に行なうべき作業(行程)がたくさんあると、それをすべて確実にこなして答えに辿り着くというのが苦手だという子が、発達障がいの子たちの中には非常に多い。特にAD/HDで不注意傾向が強い子だとミスの表出に一定の特徴がなく、いろんな形でミスするため同じパターンの問題を解いている中でも毎回違う場所で違ったりしていることもある。
例えば、小数のあるわり算の筆算の計算で
「次の小数のわり算を、商を1/10の位まで計算し、あまりも求めよ。」
といった問題。
答えに辿り着くために必要な考えるべきポイントを上げてみると…。
①わる数、わられる数の双方がそれぞれ整数なのか小数なのか?
②商という用語は?
③位の概念と位の呼称は? → ※位の意味の理解と呼称が複数あることの混乱。
④答えの小数点の答えの小数点の位置とあまりの小数点の位置は?
などがあげられる。
各ポイントの中での問題点を細かく見ると、
①では、小数点の動かし方に3つのパターンが生じる上に、場合によっては『0』を増やさないといけないなどの複雑さ。
②では、そもそも『商』という漢字が読めなかったり、その言葉の意味自体が理解できていなかったりといった知識不足。
③では、そもそもの位の意味であったり、例えば『1/10』と『0.1』のように表記や呼称が異なっていても同じ位を指していることを理解度。
④では、答えの小数点の位置はわられる数の動いた後の小数点の位置だが、あまりの小数点の位置はわられる数の元の小数点の位置であるというルール。
といった感じで、たった1問を計算して正解に辿り着くだけでもたくさんの関門があり、そのどれか一つが欠けても、どこか一ヶ所でミスをしても正解しない。特に不注意傾向が強い子はそのすべてを確実にこなすことが難しく、どこか途中で抜けが出てしまって不正解になりやすいし、その抜けの場所が毎回異なることもあるので、ミスの修正が簡単にできにくいのだ。
どうやってできるようにすればいいのか?
方法としての考え方は大きく分けて2つ。
1つは、工夫によって少しでも行程を減らし、正解までの手順を簡略化する。もう1つは、正解までの手順はそのままに、その子に合った覚え方を探して定着を図る。
1つ目の方法は、例えば、計算の一部省略だったり、順番を変更してまとめるなどして特別なルールを作ったりして、とにかく手順を減らすこと。ただ、これは一定レベル以上の力がある子には場合によっては有効であり、問題を解く時間の短縮(スピードアップ)につながるが、そうでない場合は単にミスを増長してしまうことの方が大半でおすすめできない。問題を解く上での大前提は正解することなので、ミスにつながる可能性があるルール変更(特に途中の省略)は余程の自信がない限りやるべきではない。
そうなると、取り組むべき方法としてはもう1つのその子に合ったルールの定着方法を見つけ、反復により、その手順を確実に身に付けることを地道にやっていくしかない。その方法を自分自身の力で見つけ出したり、作り出せれば一番いいのだが、さすがにそこはかなり難しいことなので、そこは先生や大人、友だちなどの力を借りればいいのだ。特に、我々先生はそのためにいるのだ。
結局、何が言いたいというと、タイトルに書いたように勉強においてそれを楽にしてくれる魔法なんてものは存在しないので、省略であったり、簡単であったりといった楽できる方法(魔法)を求めるなんてないってこと。だから、がんばるべき方法は、手順の簡略化による工夫ではなく、手順を確実に覚えるための工夫であり、その積み重ねこそができないことや苦手なことを減らし、力や自信を少しずつ伸ばしていくことにつながる最善かつ最短の方法だということ。
授業の中でそれに取り組んでいると、子どもたちはものすごぉ〜く嫌そうな顔しながら勉強してて、「またそれぇ???」という心の声がだだ漏れで聞こえてきますが、そこは緩めることができないので、これからも繰り返しやらせていただきます♪♪笑