発達障がいと精神医学との関係性。『診断』について考える。

話題になっている書籍の紹介サイトを読んでいて、非常に興味深かったのと、子育ての中でいろいろ悩まれている保護者の方々にも是非手に取ってみていただきたいと思い、こちらでもご紹介させていただきます。

3月に出版された児童精神科医の滝川一廣さんの著書『子どものための精神医学』です。保護者の方々はもちろん、多くの養護教員や学童保育指導員の先生などが手に取り、読まれているそうです。

特に、この本の中で一番興味深く、そして、これまでの認識が大きく変わると感じられた内容は『診断』という考え方についてでした。

日本における医学に関わる分野では『診断』=医療機関において医者が行なうものだという認識があたり前でした。ただ、この考え方については、大学で特別支援について学んでいるときにゼミの担当教授から「日本においてはまだまだそういった考え方が根深いが、アメリカなどでは、特に子どもたちの発達障がい等の診断は学校の先生など、より身近で、より多く子どもたちと接し、その実態をしっかり把握できている者が行なうのが主流になってきている」と教わりました。

たしかに、発達検査による結果と病院の診察室という特殊な環境下での限られた時間の中における診察だけでは、ある一定の基準までは到達できても、子どもたちの実態のより深いところまで踏み込むのは難しいことだと思います。だからこそ、保護者の方や学校の先生など、より長い時間関わり、見てきた子どもたちの様子こそが、子どもたちの実態をつかむ上でのより大きな指針となることは間違いないと思います。

滝川先生による『診断』とは…?

紹介サイトにはこう書かれていました。

本書は精神医学の歴史から始まります。身体の医学は太古の昔に始まったが、精神医学は近代の合理的な人間観の確立後に生まれたと。身体の医学は自然科学であって、個人の身体の中で完結する。しかし、精神医学は自然科学に収まらず、共同性・関係性の視野の中でとらえると。

でも、たとえば子どもが「発達障害」だと診断されたとき、多くの親は身体のお医者様の診断と、児童精神科のお医者様の診断は違うものだとは考えないのではないでしょうか。

診断とは何かということです。医師が風邪と診断するのは、自然科学です。疾患が起きている体の場所、起きる仕組み、病気の原因が共通しているとき、同じ種類の病気だと診断できる。

しかし精神障害は、外から見たその子の行動の特徴を分類し、引き出しに入れることにすぎません。自閉症の引き出しに入る、あるいは知的障害の引き出しに入ると。精神障害の診断は医学的診断ではありません。社会的判断です。

非常にわかりやすく、イメージしやすい解説に思わず、「うん、うん。」とうなずきました。個人の身体の中で完結する内容と、そうではなく、個人と社会における共同性・関係性の中で起こり得る問題として捉えるべき内容。そういう視点で見て、考えると、一般的な病気との相違点が非常に明確になります。その分、判断も含めて非常に難しい分野であるとも考えられます。

だからこそ、保護者も支援する側もその内容に関していろんな視点を持ち、固定概念的な考え方のとらわれることなく、本当に大切なことをきちんと見極められるようにしっかりと学ぶ必要がありますね。

まずは、この本を手に取るところから始めてみたいと思います。

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