タイの経済に関するニュースを見て、あの国でも政治が国民を混乱させている現実を知った。
『タイ、最低賃金40%引き上げ 物価上昇、資本流出…裏目の恐れも』
といったもの。
タイ全土で4月1日から最低賃金が約40%引き上げられた。
この政策は、昨年の総選挙で勝利したタイ貢献党インラック政権の公約の目玉だ。
しかし、物価
上昇や外国資本の近隣諸国への流出が懸念され、企業による人員削減で労働者の所得向上に必ずしもつながらないなど、裏目に出る恐れがある。
タイ貢献党は、選挙公約で今年1月から最低賃金を全国一律で1日300バーツ(約790円)に引き上げるとしていた。
産業界が強硬に反発し、タイ銀行
(中央銀行)も難色を示すなか、昨年10月に大規模な洪水に見舞われ、4月に延期するとともに、引き上げも2段階で行うことにした。
タイは行政地域区分の
都や県ごとに最低賃金が異なり、今月1日の引き上げで最低賃金が1日300バーツに達したのは、首都バンコクをはじめ、中部のパトゥムタニ県、ノンタブリ
県、南部のプーケット県など1都6県。
他の地方では、来年1月、最低賃金の再引き上げが行われる。全国一律で1日300バーツになると、地方進出によるコスト削減効果が薄れる。
最低賃金は、今後2年間、据え置かれる予定だ。
インラック政権は、企業の負担を軽減するため、今年は法人税率を30%から23%に、来年には20%に引き下げる。
日本貿易振興機構(ジェトロ)が在タイ日系製造企業に対して実施したアンケートによると、「営業収益にマイナスに影響する」と回答した企業が94.3%
(47社)にのぼった。
営業利益減少率は回答企業の平均で15.2%だった。対応策(複数回答)としては、「効率化・自動化投資を実施」が59.1%、
「人員規模の縮小」が37.9%、「販売価格への転嫁」が28.8%、「日本人駐在員の縮減」が10.6%、「一部ラインの周辺国への移管」が9.1%
だった。
タイの民間シンクタンク、カシコン・リサーチ・センターによると、引き上げ後のタイの最低賃金は、中国・上海をやや下回るものの、北京と同水準で、ベト
ナムの平均最低賃金の約4倍、インドネシアの約3倍に達する。欧米諸国によるミャンマーへの経済制裁が解除されれば、外国への資本流出の可能性はさらに高
まる。
現地紙ネーションによると、タイ銀行は最低賃金引き上げに伴う人員削減により、約6万~7万人が解雇され、失業率は0.7%から5.2%に上昇。
インフ
レ率は1%高まり、民間消費需要は1.7%低下すると試算している。タイ商工会議所は、中小企業(従業員25人以下)の人件費は平均16.2%上昇し、企
業総数の10%に当たる220万社が倒産や外国移転を余儀なくされるとみている。(シンガポール支局)
(4月24日付 フジサンケイ ビジネスアイ 配信分)
表題だけを見ると、最低賃金が40%も引き上げられるなんてことは、低所得者の国民にとってはとても喜ばしいこと。
"今"という目先だけをみれば…。
記事にもあるように、その結果、すでに失業率は上昇し、そのまま物価上昇などへの影響を与え、最終的には国民の生活は逆に厳しいものになることは目に見えている。
急激な改革は、その反動としてそれ以上に大きいうねりを生活の中に起こしてしまう。
選挙に勝ちたい(!?)ためのバラ撒き政策を公約とし、それを実施する。
公約を実施すること自体はあたり前の話だが、そもそも政治家はその公約を提示する段階で予測できる経済の混乱をもう少しきちんと考えて、国民に対して提示するということをする気はないのだろうか?
どっかの国でも似たような話を聞いたような気がしますが、どこの国でも似たようなことやってるんですねぇ…。(笑)
もちろん、こういったことは政治家だけの責任ではなく、選挙でそんな政治家を選んでしまった国民にも責任はあると思う。
しかし、生活に困窮している国民にとって、目の前に出された救済措置に飛びつきたい気持ちはわからないでもない。
でも、だからこそ、政治家の側は選挙に勝つことだけを考えて今だけのおいしい餌をバラ撒くのではなく、もう少し先まできちんと見通しを立てて政治を行うべきだし、国民も今だけのおいしい話に飛びつくのではなく、それが結果的に自分たちの首を絞めることにならないかどうかを考えてから一票を投じる必要があるだろう。
この余波は、タイという国とつながりの強い日本にとっては、洪水被害の時のように必ず大きな影響を与えることになるだろう。
日本もタイも、国民が政治家に振り回されている実状は同じで、いつもその影響を受けて困るのは国民なんですよねぇ…。
子どもたちに対して「今のことだけを見ずに少し先のことを見据えて、今何をすべきかき考えよう。」って教えることはすごく大切なこと。
でも、それを教える立場の大人たちがそんな状況で、子どもたちにいくら何を言ったところで伝わらないだろう。
そして、子どもたちが正しく成長できなければ、未来に明るい見通しなんて持てっこない。
"今"は大切。
でも、それと同等かそれ以上に先を考えることはもっと大切なこと。
本気で自分たちのことを考え、生活をよりよいものにし、子どもたちに対して素敵な未来をプレゼントしたいと思うのなら、今だけでなく先のことを考えながら今を生きるようにしよう。
そして、そうすることの大切さを子どもたちに伝えていこう。