④『凸凹をどう捉え、支援のポイントをどこに絞るべきなのか?』
凸凹の差の大小に関係なく、一般的にはどうしても“凹”の足りない部分や苦手な部分に目が向きます。ですから、当然、ご相談内容としてもそこを少しでも成長させたいという場合がほとんどです。もちろん、支援する側としても、そこを少しでも成長させてあげることで、本人の困り感や授業中の苦痛を軽減したり、なにより『わかるから楽しい』という気持ちを持ってもらいたいと思っています。
ただ、支援のポイントをずっとそこに固執してしまうことは、結果的にマイナスになる場合もあるので、どこかのタイミングでポイントを切り替える必要性があることも考えながら進めなければいけないとも思います。
障がいの有無に関わらず、人間の持つ能力には必ず限界があります。その限界を決める要素は様々ですが、発達障がいの特性がその限界になってしまうケースはどうしても避けられない現実です。にもかかわらず、闇雲にそこに固執してしまうことは、本人の困り感や苦痛を軽減するどころか、逆に増大させてしまう可能性さえあります。
じゃあ、支援のポイントをどこに絞るべきなのか?
視点を“凹”から“凸”へと切り替えて、本人の得意なところ、好きなところをどんどん伸ばしていく方向で支援を行なっていくのです。
「でも、それで本当に支援になるの?」と思われるかもしれませんが、もちろん、十分かつとても大切な支援の形です。
10月16日付け本ブログ(『発達障がいのある子たちの伸ばすべきところ③』)でも書きましたように、人間の持つ能力の項目ごとの数値の合計はみんな同じで、単に項目ごとのパラメーターの違いにすぎないという考えでいくと、“凹”が小さくなれば、その分どこかの“凸”が小さくなります。それは、そちらに時間や努力を割く分、結果的に本来持っていて伸ばせる可能性のある力を伸ばすもしくはキープするために必要な時間が削られた結果“凸”が小さくなっていくのです。
逆に、同じ考え方でいくと“凸”を伸ばすために時間を使うと、必然的に“凹”を伸ばせないし、逆に“凹”がもっと大きくなることも考えられます。ただ、すべての人がそうだとは言いませんが、たいていの人は、嫌なことをやらされたり、怒られたりするよりも、好きなことをしたり、褒められたりする方が気持ちいいし、がんばれるもの。その両者の先に待つ成長の結果には大きな隔たりができることは想像に難くありません。
ということは、“凸”を伸ばすことに時間を費やした方が気持ちよくできるし、伸びる可能性は大きい。そして、伸びたこと、褒められたことでいろいろ自信がつき、さらなる成長につながる。その自信が、苦手なことに取り組む気持ちにつながったり、知らず知らずのうちに苦手なこともできるようになっていたりといい結果を産むこともある。
見据えたいのは、本人が社会に出て自立して生きていくための“生きる力”。決して、能力の凸凹をフラットにすることが目的ではないので、“凸”を伸ばして、それを自信にし、糧にして生きていける道筋を作るという考え方はとても大事だと思っています。
どうしても目につきやすい“凹”からちょっと目を背けて、“凸”にしっかり目を向けて支援のポイントを絞ってみませんか?
<⑤につづく>