発達障がいについて少しだけ学んでみませんか?【アスペルガー症候群編(4)】

アスペルガー症候群の子の日常生活や学習場面において、困り感やトラブルを減らすための対応の方法を中心にご紹介したいと思います。もちろん、同じアスペルガー症候群という診断名であっても、個々にその特性は異なるのですべての子たちに共通の対応法というわけにはいきませんが、対応の基本として考えていただき、そこから個々に合わせて変えていけば、対応法が見つけやすいと思います。

対応する上でのポイントは『視覚支援』を有効に行ないながら、わかりやすい指示をすることです。それを念頭に置いて、具体的対応法につなげてみてください。

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対応の基本

【7つのポイントを心がける】
①ひとつずつ…一連の作業だからといって、いっぺんに複数のことをさせると混乱する。服を脱ぐ、服をたたむ、服をしまう、とひとつずつ分けて教える。

②具体的に…あいまいなことばは、想像するのが苦手な子どもには伝わらない。「ちゃんとしまって」ではなく「服をしまって」と具体的な動作を指示する。

③短く…よけいな言葉はできるだけはぶく。「お父さんの服も入っているけど、しまっておいて」などというと、どの言葉が指示かわからなくなってしまう。

④視覚的な手がかりをそえて…簡潔な言葉とともに、イラストや写真をみせると、より理解しやすくなる。子どもによって、ジェスチャーや文字を好む場合もある。

⑤肯定的に…失敗を否定する言葉は使わない。「脱ぎっぱなしはダメでしょ!」ではなく、「脱いだ服はかごに入れるのよ」と、失敗を正す方法を示す。

⑥予定を伝える…作業のはじまりと終わりを明確に指示する。「この洗濯ものをしまったら終わりね」というように伝える。

⑦失敗しないですむように…不可能なことはやらせない。

対応の基本と学習支援

上記の7つのポイントは、基本的に生活内におけるポイントでありますが、これらすべて学習支援の中で子どもたちの力を伸ばしていくポイントでもあります。

①単純な計算等は比較的得意な子が多いですが、ちょっと複雑な計算や文章題などの複数の要素が盛り込まれた問題になると一気に子どもたちの苦手度は増します。複数の要素が含まれた問題であっても、問題そのものや問題の分解の仕方など、その子の特性や能力に合わせて一度にすべてのことを考えるのではなく、段階的に一つずつ考えながら答えに辿り着けるような筋道の方法を作り、それを定着させていくことが大切です。

②どんな問題の解き方でも、想像するのが苦手な子の場合は、まず、基本の単純系の問題の解き方を具体的に教え、そのやり方通りやることでちゃんと解けるという自信をつけさせてあげること、そしてそれを反復して定着できるようにしてあげることから始めることが大切です。自分で考えてみるとか、応用してみるというのはその後のステップです。

③ポイントを端的に教えることから始める。これは②の内容に繋がることですが、内容を広げていくことや応用につなげていくのは後で考えるようにして、まずはポイントを絞り込んで、理解できる内容のみを伝え、「できる!!」という達成感と自信をもたせてあげましょう。

④口頭だけでの説明では伝わりにくいので、視覚的な情報をしっかり盛り込んで伝えてあげることが必要です。この場合、一度聞くと消えてしまう聴覚情報に対して、同じ情報を文字という形で伝える視覚情報という手段だけではなく、その文字情報をイラストや図式化して、興味の持てる形やイメージしやすい形に変えてあげた上での視覚的な手がかりが理解に向けての大きな後押しになります。

⑤学習を教えていると、ポイントはどうしても間違えた問題や内容にいきがちですし、もちろん、そこが一番大切です。でも、その前にまず、できた部分をしっかり褒め、それはしっかりあなたの力になっているよということを感じさせてあげることが必要です。

⑥学んだことを身に付けるには落ち着いて勉強することが一番。そのために必要なのが見通しをもって勉強に臨むこと。ゴールの見えないレースは大人でも大変。だからこそ、一つ一つの場面でゴールを明確にしてあげることが大切です。ただし、このゴールを決める際に“量(○○ページとか○○門)”はやめて“時間(○○分間とか○時まで)”にしましょう。その方が正確さや丁寧さが身に付きます。

⑦まずはできる問題だけをチョイスして、できない問題などは目の前に出さないようします。そういった意味では、テキストを購入して、それをそのまま渡して使わせることも避けた方がいいです。解けない問題、書き込めない問題は、ずっと残り、本人の目に“自分にできないもの”が明確な量となってしっかり映ってしまいます。テキスト購入して使用する場合は、手間でも本人ができる部分だけをコピーして使用する方がいいです。そうすれば、1冊のテキストが1回だけの使い切りにならず、何度も有効に使えるというメリットにもつながります。

“視覚支援”はとても有効な手段です。ただ、『見せる』という意味での“視覚支援”という考え方が多くなりがちですが、上記学習場面での対応方法にも書いたように『見せない』という意味での“視覚支援”も考えることで、本人の理解や定着、そして自信につなげられる場合もたくさん生まれてきます。

ただ、いろんなところで何度も言っているように、これらはすべて一般的な支援の一つに過ぎず、きちんと一人ひとりの特性に合わせた支援の方法や手立てを考えることが必要です。

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