先日、毎日新聞のニュースに出ていた子どもの貧困問題。発表されていた研究による試算は驚く数値だった。と同時に、いろんな考え方・捉え方があってあたり前のことではあるが、少し考え方が気になりながら記事を読んだ。
子どもの貧困を放置すれば、経済損失は約2.9兆円に及び、国の財政負担は約1.1兆円増える−−。現在15歳の子どもを対象にした研究で日本財団がこんな試算を出した。15歳に限らなければ損失額は何十倍にも膨れ上がるという。日本財団は子どもの貧困対策を「慈善事業でなく経済対策として捉え、官民で取り組むべきだ」と指摘する。
研究は今年7〜11月、日本財団と三菱UFJリサーチ&コンサルティング(東京都)が実施した。15歳の子ども約120万人のうち、ひとり親家庭の15.5万人、生活保護家庭の2.2万人、児童養護施設の0.2万人の計約18万人を対象とした。子どもの時の経済格差が、学力や進学率の教育格差を生み、将来の所得に影響すると推定し、現状のままの場合と教育格差を改善した場合を試算した。
大学や専門学校などへの進学率は80%に達しているが、貧困世帯の子どもは32%にとどまる。18万人の就業状況を推定すると、正社員は8.1万人、非正規社員3.6万人、無職4.8万人などとなり、現状では64歳までに得る所得の合計は約22.6兆円だった。
一方、何らかの対策が行われ、高校の進学率、中退率が一般家庭の子どもと同じになり、大学などへの進学率が54%まで上昇したと仮定すると、正社員は9万人に増加し、非正規社員は3.3万人、無職は4.4万人に減少して、合計所得は約25.5兆円に増えた。
所得が増加すれば、国に納める税金なども増える。税と社会保険料の個人負担額から、医療費や生活保護費などの給付額を差し引いた「純負担額」は、現状では約5.7兆円だが、改善すれば約6.8兆円になった。
厚生労働省によると、17歳以下の子どもの貧困率は16.3%(2012年)で過去最悪を更新し、6人に1人が貧困状態にあるとされる。日本財団は「子どもの貧困を経済的観点から見た調査はこれまでなかった。国民全体の問題と捉え、官民の対策の後押しになれば」としている。(12月3日毎日新聞より)
「慈善事業でなく経済対策として捉え、官民で取り組むべきだ」この考え方には大賛成だ。教育の支援にしても、食糧支援にしても、民間レベルで慈善事業、NPO活動としての支援ではすぐに限界が来てしまうことなどわかりきったこと。実際に、必要なところへ必要な支援をしている活動にもかかわらず、資金面何度の問題から活動が立ち行かなくなっているという話はたくさんある。だからこその国や行政が対策を講じなければどうにもならないところまで来ている気がする。
ただ、この試算のまとめや指摘は、国の経済が今後どうなっていくかに焦点が当たり過ぎていて、子どもの時の経済格差が、学力や進学率の教育格差を生み出しているといった、教育そのもの根本的な問題の部分はサラッと流されているのが気になる。
経済格差が教育格差を生んでいる一つの要因であることは間違いない。ただ、小学校から中学校までの9年間で義務教育という制度を法律で定めている国で、教育格差が生まれていることの原因をもう少ししっかりと突き詰めて考えて欲しい。
本当に経済格差によるものなのか?
それも“Yes”と言わざるを得ない。なぜなら、公教育だけで足りない部分を他の教育機関に頼るためにはどうしても教育費が必要になる。それにはダイレクトに経済格差が影響を及ぼすであろう。
だが、本当にそれが大きな原因なのか?
公教育だけで足りない部分ができ、他の教育機関に頼らざるを得ない状況になっていることの問題点を考え、対策を講じることが大切だと思う。途上国が国の未来に向けての重要施策として目先の支援以上に子どもの教育を大切にしているのと同じように、今、日本という国は本当に国の未来を考えるなら経済としての国力upとしての方向性ではなく、国を担う根幹とも言うべき子どもたちへの本当に必要な教育環境を整えて教育格差をなくし、教育そのものの質の向上を目指すことこそが本当の意味での国力upにつながり、日本の未来が拓けるのだと思う。
経済格差や教育格差が起こっている現在におけるこの負のスパイラルから抜け出すには、きちんとした基礎学力に支えられた上で国際競争の中で立ち遅れないだけの教育を子どもたちに提供できる環境を作り出すことこそが最重要課題であり、目先の表面的な問題解決だけをしている場合ではない。政治家が選挙で票を得たいがために『年金受給者(低所得者)に3万円』なんて、ばら蒔きを政府の方針として打ち出しているような国じゃあ、ダメだよねぇ…。