過去最低

岡山県教育委員会から、来年度の公立高校の第一次進学希望調査の結果が発表された。
1952年以降で過去最低の平均競争倍率1.15倍という調査結果。
学科別の結果でも、普通科が0.03ポイント下がっての1.11倍になったのをはじめ、商業科、農業科なども低下してる。
そんな中で、工業科だけが0.08ポイント上がっての1.31倍という結果。
県教委の発表では、「就職難が続く中、工業科の内定率が堅調なことが背景にあるのではないか」とのことだが、本当にそこが原因とは思い難い。
ましてや高卒での就職率は50%程度の数字のはずだが、それを堅調などと言っていていいのか?
就職難を一つの原因と考えるならば、その就職難の原因は間違いなく不況状態にある現在の景気の悪さにある。
不況により、給料やボーナスも下がっているという現状を考えると、学費の安い公立高校の希望者が増えても良さそうなものだが、結果は上記の通り下がっている。
加えて、高卒での就職の難しさを考えると、大学・短大・専門等への進学により少しでも就職しやすい状況へと持っていこうと思えば、進路は自ずと普通科になると思われるが、それに反比例するような結果も出ている。
どちらかと言えば教育後進県の岡山県では、教育熱の高い都道府県に比べてまだまだ公立志向が強く残っていて、特に今の中学生ぐらいの子どもたちの親の世代では「公立に行けない→私立進学」といったイメージを持っている場合が多い。
そんな中で下がる公立高校への進学希望率。
この結果の意味するところはどこにあるのだろう?
個人的にはこう思っている。
ずっと子どもたちに関わってきて、最近特に感じることは子どもたちの勉強離れの傾向。
自分も含めて、昔から勉強が好きなんて子はほとんどいなくて、たいていの子は勉強が嫌いなのはあたり前だが、最近はその質がさらにひどくなり、どんどん勉強離れが進んでいるように感じている。
その結果、勉強ができるもしくは勉強をする子どもと、勉強ができないもしくは勉強をしない子どもと大きく二極化してきている気がする。
もちろん、その中間層で勉強は好きではないがしているもしくはさせられているという子どもも多いが、以前よりもその比率は少なくなり、二極化の幅は広がっている。
ただ単にそれだけではなく、子どもたち全体の基礎学力の低下もゆとり教育の影響で否めない実状の中、一部の子どもたちを除いて学習能力自体が低下していると感じている。
そのことが今回の調査結果やここ数年の進学状況にも現れてきているのではないかと思っている。
具体的には、ある一部の私立高校の特別進学クラス等が有名大学への高い進学率という結果を残していたり、私立高校自体が生き残りをかけて特色のある学科・コースを作って生徒集めを真剣に行うことで、保護者の中でも私立高校の評価が以前より高くなっている。
私立高校=学費が高いというイメージ(現実に高いが…)はあたり前だが、一部の優秀な生徒には学費免除や入学金免除、はたまた卒業後の大学の学費まで高校が持つといった特典があったりするため、勉強をがんばっていい成績をとっている子どもたちにとっては公立高校へ進学する以上にたくさんのメリットがある。
そんな子たちが公立高校に進学せず、よりレベルの高い私立高校に進学する。
これが二極化の上位に位置する子どもたちに見られる傾向。
逆に、二極化の下位に位置する子どもたちにしてみれば、受験に向けて対応するために5教科の勉強をすること自体が苦痛であったり、難しかったり(できなかったり)して、安易に受験科目数の少ない私立高校の受験へと流れていく。
その上、学力的にあまり自信がないから、スベリ止めといった意味合いで受験しておいて、公立高校を受験するといった形をとらず、確実に入れる高校に入っておくとかなんとか入れる高校に合格でできるようにするために専願制を利用して、合格という結果を得ようとする。
そのため、私立高校の受験がすべてであり、公立高校の受験そのものの必要ないというか受験すること自体がなくなってしまってくる。
そうすることで、子どもたちにとってみれば早々に『受験』という強制的に勉強をしなければいけないという環境から抜け出すことができるのだから、ある意味喜ばしいことのように考えている子どもたちが多いのもまた事実。
そんなことが、私立高校への進学希望率が上がり、必然的に公立高校への進学希望率が下がってきている一つの要因になっているのではないかと…。
そんな子どもたちが、将来大人になり、社会に出て生きていくようになったとき、どうやってこの日本を支えていくのだろう。
たかが、一都道府県の公立高校の進学希望調査の結果かもしれないが、そこで現れた数字の意味を、子どもたちに係わるすべての大人たちは真剣に考える必要があるのではないか?
そう思えて仕方がない…。

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