勉強における不明瞭なルールとローカルルール

『3.9+5.1=9.0』

さて、この解答は正解?不正解?それとも減点対象?

あなたはどう思いますか?

最近、Twitterに投稿されたことで話題になっているこの算数の計算の解答に関する判断基準。ネットニュースでは話題になっているのでご覧になった方も多いかと思います。

20161202001

賛否両論、いろんな意見があり、脳科学者の茂木健一郎さんが「虐待である」とブログで抗議したり、文部科学省の見解を掲載するネットニュースまであったりと読んでいて、本当にいろんな考え方や意見があるなぁ…と感じています。

ちなみに文部科学省の見解は以下のようなものであったそうです。

「基本的には『9』と『9.0』は同じと考えている」「『.0』を付けてはいけないというルールは学習指導要領にはなく、文科省が指示しているものではない」と説明しており、斜線で消すというルールについては「教科書にはそうするように書かれている」とのこと。しかし「『.0』を書いた場合減点するよう指導しているわけではない」と語っており、特に明確な基準の下で減点対象とされているわけではない。

「(9.0の場合)小数点を書き忘れて90になってしまう」「小数点が必要ない計算でも『.0』を書いてしまう」という子どももいるとのこと。そういった子どもに厳密な指導をする目的で「『.0』を書いたら減点します」と教員がアナウンスすることもある。

今回のような減点は各学校や教員の裁量に委ねられていて、学校の状況や各児童の理解度も異なるため、「減点しない」という形での指導基準統一も難しい。

ということらしいです。これだけ見ていると「う~ん、さすが行政。見事なまでのグレーな回答。」と思わず苦笑いしてしまいました。

ここからは個人的な見解です。

この議論の内容について、子どもたちに勉強を教えている立場から考えてみて一番感じることは、一つのことを議論しているようで、みんなが議論している土俵が違うんだから一つの答えに辿り着くことはないんじゃないかな?ということ。

どういうことかというと、数字の世界(算数や数学の世界)という基準で考えると、これは正解であって間違いだとか減点だとかの対象ではない。

茂木健一郎さんのような理論的な観点を基準で考えると、これは上記の数字の世界の理屈と同じになるので間違いだとか減点の対象ではない。

しかし、指導して子どもたちの力を伸ばすとか正しく定着させることに主眼を置いた教育場面を基準にすると少し話が変わってきます。

例えば、子どもへの確実なる定着のために授業の中で先生が独自ルールとして指導し、その指導内容を理解し、きちんと実行できているかという基準で採点をすると不正解であったり、減点であったりといった採点も起こりうるということ。

簡単に言えば、一種の“ローカルルール”ってことです。遊びや仕事、生活の場面でも、ある一定の限られた範囲の中だけで通用する独特のルールってあるじゃないですか?まさにそれと同じ考え方です。

ただし、この場合に現場できちんと指導しておかないといけないことは、基本ルールと“ローカルルール”の明確な違いまで子どもたちに伝えておく必要があるということです。

具体的にこの問題で言えば、「『9.0』と『9』基本的に同じなのでどちらを書いても正解です。ただ、先生は『.0』をきちんと斜線で引いて消すことをルールとしますので、テストの時も消していない場合は‘×’にしますよ。」と明言した上でテストを行なうということです。そこまでをきちんと明言しておくことで、この解答を‘×’にした明確な理由が成り立つので、仮に保護者の方から問い合わせがあったとしても、上記のルールをきちんと説明した上で、あくまで“ローカルルール”上の‘×’であるという説明が成り立ちます。(中にはそれでも納得されない保護者の方もいらっしゃるかもしれませんが…。苦笑)

だから、今回の場合にそのあたりがどうだったかがきちんとわからない中でのネット上の議論は、それぞれの人がそれぞれの主観で物申すだけになってしまうんじゃないかな?と思ってしまうわけです。

こういった言い方をすると、文部科学省のグレーな回答と同じようになってしまいますが、実際の教育現場にいる立場の人間としてはこのように考える次第であります。

結局、指導基準統一ルールが難しいという理由での“不明瞭なルール”が引き起こす問題。文部科学省が学習指導要領において明確なルールを提示してしまえば、こんな議論は起こらないと思うんですけど…。

-代表者ブログ, 教育について, ひとり言

© 2024 NPO Selfish(セルフィッシュ)