教育と法律

2004年、岡山県に全国初となる『株式会社』による学校が設立され、当時話題になった。
一般に学校と言えば公立の学校か学校法人による私立の学校になるが、『株式会社』による学校が設立されたことで、より教育の幅が広がるのではないと期待していたが…。
この試みは、当時の小泉内閣の元で行なわれた構造改革特区の一つ、教育特区の制度を活用して設立されたもの。
この制度では、学校運営に際して公立の学校や学校法人の運営するより学校よりも自由なカリキュラムが組める、すなわち教育全体の自由度が広がるという試みだった。
また、この学校が設立されたのが岡山県であるという身近さが、岡山で教育にかかわる仕事をしている人間として将来性に期待する材料でもあった。
しかし…。
結局、そんな『株式会社』による学校運営も7年という短い時間で行き詰まり、来年度から学校法人へ移行することになったらしい。
期待した新しい試みの大きな壁となったのは、可能性を作り出したものと同じ“法律”だった。
この改革後の規制緩和の流れの中で、公立の学校や学校法人の運営する学校でもある程度自由にカリキュラムが組めるようになってしまったことで、『株式会社』による運営のメリットが少なくなってしまったことや、私学を対象とした助成金の対象の扱いにもならなかったこと、また、学校法人なら免除される固定資産税や不動産取得税ですらその恩恵を受けることができず、実際の運営はとても大変だったそうだ。
加えて、『株式会社』という、一般的に営利を目的としている場合に使う法人格であるがゆえ、そのイメージを払拭できず、生徒募集にもかなり大きな影響を与えたようだ。
法人格のイメージによる生徒募集の難しさは仕方ないにしても、税制上の優遇面に関しては同等もしくはそれ以上の措置を講じてもらわないことには新しい分野への進出はどうしても難しいと思う。
法律の中で新しい試みを行なうならば、法律という枠組みの中で別の法律がその妨げとなるような問題点はある程度クリアになるところまできちんと法制化し、その上でできる仕組みを作って欲しい。
これは、教育に関した今回のような問題だけではなく、すべてのことについて言えること。
とはいえ、そもそも法律そのものが諸刃の剣なので、常に表裏一体で法律が法律を縛るような形で作られているため、そうすること自体がとても難しいことだということもわかる。
結局、そんな中で新しいことにチャレンジしていくためには、その分野のより深い専門知識や経験だけではなく、法律の分野に関しても精通しておかなければいけないということになる。
素人にはとんでもなく高いハードルとなって立ちふさがる…。
子どもたちのために、みんなのためになるような法律が整備されることが、本当の意味でのこの国の発展につながるのに…。

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