発達障がいについて少しだけ学んでみませんか?【LD編(1)】

学習障がい(LD)とは?

『学習障がい』または『LD』という言葉は、比較的耳にする機会が多くなった気がしますが、他の発達障がいと比べて、意外と詳しくは知られていない障がいになります。それは、この障がいの特性や診断基準が一般的にわかりにくいことや判断すべき要素が複雑なことに起因していると思います。

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まず、このLDという言葉はLearning Disabilityの略ですが、これ自体は教育の言葉で、医学用語としてのLDという言葉はLearning Disorderの略です。すなわち、教育の現場と医学の現場では、同じ『学習障がい(LD)』という言葉を使っていても、少し解釈が異なります。

ですから、そのあたりの複雑さが、理解の難しさにつながっているものと考えられます。

学習障がい(LD)の定義

教育のLD(文部科学省)
学習障害とは、基本的には全般的な知的発達に遅れはないが、聞く、話す、読む、書く、計算する又は推論する能力のうち特定のものの習得と使用に著しい困難を示す様々な状態を指すものである。
学習障害は、その原因として、中枢神経系に何らかの機能障害があると推定されるが、視覚障害、聴覚障害、知的障害、情緒障害などの障害や、環境的な要因が直接の原因となるものではない。

医学にLD(アメリカ精神医学会の分類DSM-IV-TR)
①読字障害
A.読みの正確さと理解力についての個別施行による標準化検査で測定された読みの到達度が、その人の生活年齢、測定された知能、年齢相応の教育の程度に応じて期待されるものより十分に低い。
B.基準Aの障害が読字能力を必要とする学業成績や日常の活動を著明に妨害している。
C.感覚器の欠陥が存在する場合、読みの困難は通常それに伴うものより過剰である。

②書字表出障害
A.個別施行による標準化検査(あるいは書字能力の標準的評価)で測定された書字能力が、その人の生活年齢、測定された知能、年齢相応の教育の程度に応じて期待されるものより十分に低い。
B.基準Aの障害が文章を書くことを必要とする学業成績や日常の活動(例:文法的に正しい文や構成された短い記事を書くこと)を著明に妨害している。
C.感覚器の欠陥が存在する場合、書字能力の困難が通常それに伴うものより過剰である。

③算数障害
A.個別施行による標準化検査で測定された算数の能力が、その人の生活年齢、測定された知能、年齢相応の教育の程度に応じて期待されるものより十分に低い。
B.基準Aの障害が算数能力を必要とする学業成績や日常の活動を著明に妨害している。
C.感覚器の欠陥が存在する場合、算数能力の困難は通常それに伴うものより過剰である。

簡単に言うと、医学用語としてのLDは読み、書き、算数(計算)の3つの学習内容に限定しているのに対して、教育の現場では、より広義にわたっていることが大きな違いです。

LDに関するよくある疑問点

LDの本によく出てくる3つの疑問点を中心に、LDについて知っておきたいことをまとめてみます。

【新しい障がいですか?】
決して、新しく認知されたり、定義された障がいではありません。定義自体は、当時の文部省(現在の文部科学省)が1999年に行ない、ここ15年ほどでようやく認知されるようになりました。しかし、LDの特徴をもつ子どもは以前からたくさんいました。

2005年の文部科学省の調査では、一般の小学校、中学校の通常学級でLDの疑いのある子どもは、全体の4.5%を占めると発表されており、決して低い割合ではありません。

【しつけや子育てが原因ですか?】
決して、しつけや子育て、本人の心構えなどが原因ではありません。LDの子どもたちは、もののとらえ方や理解する仕組みに少しクセがあるため、他の子どもたちと同じ方法で学ぶことが苦手だったり、時間がかかるのです。

そもそもの原因は、脳の中枢神経に画像検査やその他の検査ではとらえられないほどの小さな不具合が生じていることとされているのが一般的な説です。その不具合がどの部分にあるかによって、苦手な部分の個人差が生まれます。

【遺伝は関係しますか?】
直接遺伝に関わっているというデータはありませんし、なぜ起こるかはわかっていません。極端な低体重で生まれたり、出産後のケガなどが関係するという説もあります。はっきりとした遺伝を裏付ける研究はありませんが、親子で姿形が似るように、脳の機能や発達が似ている可能性は考えられます。

LDの子どもをもつ親の中には、必要以上に自分を責めたり、また原因を探すのに一生懸命になる人がいます。しかし、はっきりした原因を探っても実りはありません。子どもの特性を理解し、支援することが何よりも助けになるのです。

LDという障がいを単体で見たときに、ある一部の能力に特化して困難を示すことが多いのが特徴であるということは、裏を返せば、他のことは問題なくできる場合が多いということです。例えば、書字表出障がいの場合だと、特に漢字書字のみに困難さが生じ、文章で言えば読むことは問題ないし、算数の計算なども問題なくできます。

だから、その一部ができないことが『努力が足らない』『がんばっていない』と評価されてしまいがちです。決して努力不足などではないのに、そこに気付けずに追い込んでしまうと二次的な問題につながることも少なくないので、正確に状態を見極め、理解し、本人に合った支援を行なうことが本人の成長には必要不可欠です。

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